岡山地方裁判所 昭和48年(わ)623号 判決 1974年3月15日
主文
被告人を懲役八月に処する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、
第一、昭和四八年六月二五日午後一一時一五分ごろ、玉野市奥玉一丁目二三番地お好焼屋「たけや」で飲酒した後に、同店前に置いてあつた普通乗用自転車(岡五五そ五八七四号)を運転して更にいわゆる二次会へ行こうとしたが、運転技術が未熟であり、しかも当時前記のごとくお好焼屋で清酒、ビール等を飲酒し血液一ミリリットルにつき一・九四ミリグラム以上のアルコール分を身体に保有し、そのため正常な運転をすることが困難な状態に陥つていたのであるから、このような場合、自動車の運転は、厳に、これを避けるべき注意義務があるのに不注意にもこれを怠り、あえて運転を開始した重大な過失により、同所から約一〇〇メートル進行した同市玉五丁目九―一六番地付近道路を時速約四〇キロメートルで南進中、酒の酔いと運転技術未熟のため的確なハンドル操作ができず蛇行して自車を道路右側の旭自動車株式会社の車庫及び松原達夫方ブロック塀に衝突させ、よつて同乗中の上野山文男(当時二一年)に加療約六ヶ月を要する顔面挫創・脳挫傷・頚椎損傷、角谷和馬(当時二〇年)に加療約二ヶ月を要する顔面挫傷・頸椎損傷・左手背両足背挫創、福本博之(当時三六年)に対し加療約二ヶ月を要する顔面挫創・脳挫傷・頸椎損傷を、それぞれ負わせ、
第二、 公安委員会の運転免許を受けないで前記のとおり普通乗用自動車を運転し
たものである。
(証拠の標目)(省略)
(累犯前科)
被告人は昭和四五年一一月一七日大阪簡易裁判所で窃盗罪により懲役一年二月に処せられ、昭和四七年四月一一日右刑の執行を受終わつたものであつて、右事実は被告人の検察官に対する供述調書、検察事務官作成の前科照会回答書によつてこれを認める。
(法令の適用)
被告人の判示第一の所為中、上野山文男・角谷和馬・福本博之に対する各重過失傷害の点はいずれも刑法二一一条後段・罰金等臨時措置法三条一項一号に、酒酔運転の点は道路交通法一一七条の二第一号・六五条一項に、判示第二の所為は同法一一八条一項一号・六四条に該当するところ、判示第一の所為は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段・一〇条により一罪として犯情の最も重い上野山文男に対する重過失傷害罪の刑で処断することとし、判示第一及び判示第二の各罪については、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、前記の前科があるので同法五六条一項・五七条により再犯の加重をなし、以上は、同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文・一〇条により重い判示第一の罪の刑に、同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役八月に処し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文を適用し、全部これを被告人に負担させることとする。
よつて主文のとおり判決する。